犬の椎間板ヘルニアの症状と原因!予防法や対策は?
犬がよく罹る病気のひとつに「椎間板ヘルニア」というものがあります。
人間でも耳にすることがあるものですが、犬の場合は人間よりも深刻な状態になることもあります。
椎間板ヘルニアについて、その原因や治療法など詳しくまとめました。
椎間板ヘルニアとは
椎間板とは、背骨の間にあるクッションの役割を果たしている髄核と、その周りの繊維輪と呼ばれる部分の総称です。
老化や外傷などで椎間板が損傷すると、中身が飛び出し背骨の周辺の神経を圧迫することで痛みや麻痺を引き起こします。
椎間板は、首から腰までのどの部分にもあるので、発症する部位はさまざまです。
犬の場合は背中から腰にかけて発症する率がおよそ8割以上と高く、その中でも背中の中央部分(第11胸椎~第3腰椎にかけて)がいわゆる危険地帯とされます。
また、リードを引っ張るなど外部からの強烈な力によって、首や胸あたりの椎間板が損傷するケースも多く報告されています。
症状
- 歩き方がおかしい
- 首を上げられない
- しっぽが下がったまま
- よろける
- 片側または前後のいずれかのつま先が上がらない(ナックリング)
- 歩かせると片側へ寄っていく
- 麻痺
基本的には、歩き方の異常で気づくケースがほとんどでしょう。
ある日突然症状が出ることも多く、その状態によって治療法も変わりますが、すぐに病院に行けない場合はとにかく動き回らせないよう、安静にさせておく必要があります。
出来るだけ早く病院へ連れていきましょう。
分類
ハンセンⅠ型
ダックスフント、コーギー、ビーグルなど、軟骨異栄養性犬種と呼ばれるタイプの犬に起こりやすく、比較的若い時期に発症します。
もともと変形が起こっているところへ、外部からの強い刺激が加わることで起こるため、抱っこの仕方やリードの付け方、遊び方などを注意する必要があります。
ハンセンⅡ型
加齢とともに変形した椎間板が、脊椎を圧迫することで発症します。
6歳以上の高齢犬に多く、慢性的な経過をたどることが多いようです。
グレード(重傷度)
目安として、グレード1からグレード5まであり、出来るだけ早い段階で治療することが望まれます。
グレード1
麻痺はないが、抱き上げると痛がる、運動を嫌う、段差を超えられなくなるなどがあります。
グレード2
麻痺が出始め、主に後肢の力が弱くなります。つま先をこすりつけるような歩き方をしたり、ふらつきが出ます。
グレード3
後肢を引きずる、足をあげられない、立ち上がれず前足だけで動こうとします。この時は後肢はほぼ麻痺状態です。
グレード4
自力での排尿ができなくなり、尿は少しずつ垂れ流す状態になります。
グレード5
痛覚も失います。
後肢に強い刺激を加えても全く痛みを感じません。
こう見ると、徐々に進行するように思えますが、ハンセンⅠ型に分類される場合は、たった1日でグレード5まで進行することもあり、治療法を選択するうえでも、とにかく獣医師にすぐ見せることが大切です。
治療法とケージレストについて
大きく分けると、内科的治療と外科的治療に分かれます。
グレード1~2の場合は、内科的治療を選択する場合もありますが、グレード3以上になると回復率に差が出てくるため、多くの病院では手術を勧められるでしょう。
年齢や特別な事情で手術が出来ない場合は、内科的治療法もあり得ます。
ケージレストについて
グレードが低く、手術が必要ない場合、ホッとする方も多いと思いますが、実は手術をしない場合は「ケージレスト」といって、4~6週間にわたり絶対安静をさせることが条件となります。
これは、散歩をしないとか抱っこしないとかいうレベルではなく、トイレ以外は寝たきりにさせるという厳しいもので、場合によっては肢を固定し動かせないようにすることもあります。
かわいそうに思えますが、飛び出した椎間板を手術しないで自然に安定させるためには、このケージレストが上手くいくかにかかっているので、出来ない場合は手術を選択すべきでしょう。
薬はあくまで補助であり、内科的治療はケージレストです。
外科的治療の場合は、そもそも飛び出した椎間板を摘出するため、ケージレストは不要です。
予防法
そもそも、ヘルニアの発症のきっかけは、遺伝的要素を持っている犬であっても外部からの刺激で起こることがほとんどです。
たとえば、脇に両手を入れて肢を支えず、ぶらーんとさせて抱く人がいますが、これは犬にとって非常に負担が大きいため絶対にやってはいけません。
抱き上げるときは必ずお尻を支えて背中や腰に重力がかからないようにしましょう。
その他に、段差のある場所の昇り降りもNGです。
ソファーなど高い位置からジャンプするような、やんちゃなワンちゃんの場合は犬用ステップを置いてあげるなど工夫が必要です。
また、最近問題となっているのが、しつけのためのリードの間違った使い方によるケースです。
ジェントルリードや引っ張り癖を直すためのチョーカーなどは、正しく使用する分には良いのですが、力の入れ加減を間違えると、犬の首に大きな負担となりますので、使用する際は正しく使用しましょう。自信がない場合はやめてください。
肥満も背中に負担をかけるので要因となります。
特に、胴の長いダックスなどは肥満がヘルニアの大きな要因になるので、フードの選び方にも注意をしましょう。
抱っこの仕方やリードの使い方に気を付ける
椎間板ヘルニアは、どんな犬でも起こり得る症状です。
そのなかでも、胴の長いタイプや遺伝的に好発しやすい犬種は、気をつける必要があります。
それとともに、普段から獣医師の診断を定期的に受けることも大切です。
正しい抱き上げ方や、リードの使い方なども、この機会にもう一度家族で確認し合ってみてはいかがでしょうか。
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