犬の予防接種の種類と必要性
犬は、生涯において受け続けなければいけない予防接種があります。
また、生まれて数週間経過後に摂取することが望ましい予防接種もあります。
今回は、犬の予防接種の種類や性質、その意味などを詳しく調べました。
予防接種はなぜ必要なの?
予防接種とは、病気を予防するために、あらかじめ抗原物質を投与することで、ワクチン投与とも言われます。
その物質は、生きてはいるが毒性を限りなく弱めた状態や、不活性化された状態の病原体などが用いられます。
これら病原体を体内に入れることで免疫がつき、その病気にかからずに済む、あるいはかかったとしても軽傷で済むというメリットがあります。
犬の予防接種には大きく分けて2種類(狂犬病・混合ワクチン)あります。
狂犬病予防接種
狂犬病予防法という法律に基づいて、年に一回、生涯にわたって摂取する義務があるのが、狂犬病予防接種です。
これは飼い犬の畜犬登録とともに義務となっており、違反すると罰金刑が科されることがあります。
狂犬病について
現在の日本では、狂犬病の発生は1957年以降長きにわたって認められていません(注:海外で感染し、日本に帰国後死亡した例は1970年と2008年にあります)が、海外からの愛玩動物輸入増加などで再侵入の危険性は引き続き高いとされています。
感染経路は、狂犬病にかかった動物(主に犬)に咬まれる、粘膜部分を舐められることで感染します。
脳に近い部分を咬まれると、それだけ発症までの日数が短くなり、発症すると風邪に似た症状から傷口の違和感にはじまり、その後不安感や興奮、水を飲み下すと強い痛みがあるため水を極端に怖がる恐水症、恐風症などの精神錯乱状態に陥ります。
しかし、常に意識は明瞭であることから、発症して死亡するまでの間、感染者は非常に苦しい時を過ごすこととなります。
発病後の致死率はほぼ100%
狂犬病が恐ろしいのは、致死率の高さにあります。
全世界で毎年50,000人以上が死亡し続けている歴史の中で、回復したのは8人のみで、ワクチン接種なしで回復したのは1人だけです。
命を落とさずに済んでも麻痺や歩行困難などの後遺症が残ることが多いようです。
畜犬登録とは?
畜犬登録、飼い犬登録とは、生まれて91日以上の犬の飼い主に義務付けられた手続きのことで、保健所で行います。
動物病院で狂犬病予防接種を受けたのち、費用(2,000円から3,000円程度)を支払って登録します。
飼い主の住所氏名と共に犬の種類や毛の色、呼び名、性別などが登録され、狂犬病が発生したり、咬傷事件などが起こった場合に利用される大切なものですから、必ず登録しましょう。
また、この登録をもとに、年に一度の狂犬病予防接種のお知らせなどが届くことになります。
混合ワクチン接種
混合ワクチンは任意となりますが、あらゆる犬の伝染病などを未然に防ぐために、接種することが好ましいとされています。
種類も1種から11種混合まで幅広く、その有効期限も違うため、どのワクチンを接種するかで、その後のワクチン接種スケジュールも変わってきます。
基本的には、仔犬が母親からもらう免疫が切れるタイミングで行います。
- 生後6~8週で1回目
- その後は2~4週の間隔ごとに接種
- 生後16週でいったん最終
- 最終から半年後に強化目的の接種(ブースター)
- 以降は1年ごと、あるいは3年ごとの接種
上記のようなスケジュールに基づき接種します。
かかりつけ医院がある場合は、たいていの場合お知らせのハガキが届きますので、そのタイミングで接種するのが間違いないでしょう。
任意接種ワクチンの内容
犬が感染する病気は様々あり、その中から必要なワクチンを接種するのですが、現在では数種類をまとめて接種する混合ワクチンが主流です。
1回で済ませられるため、6種、または9種ワクチンを勧められることが多いです。
しかし最近では、レプトスピラの種類の多さ、またカバーできる種類などから9種を取り止め、11種で統一する病院も増えてきました。
1種 | パルボウイルス |
2種 | ジステンパー パルボウイルス |
3種 | ジステンパー アデノウイルス1,2型 |
4種 | パルボウイルス、アデノウイルス1,2型 ジステンパー、あるいはレプトスピラ4種 |
5種 | 4種+パラインフルエンザ |
6種 | 5種+コロナウイルス |
7種 | 5種+レプトスピラ2種 |
8種 | 5種+レプトスピラ3種、あるいはコロナウイルスとレプトスピラ2種 |
9種 | 6種+レプトスピラ3種 |
10種 | 6種+レプトスピラ4種 |
11種 | 6種+レプトスピラ5種 |
犬の伝染病
犬がかかる伝染病についてみていきましょう。
ワクチン接種することで、以下の病気を未然に防ぐ、もしくは発病しても症状を軽減することができます。
パルボウイルス
犬から人への感染なしですが、腸炎を発症するタイプと心筋炎を発症するタイプとがあります。
いずれも母親からの免疫が切れる頃に発症しやすく、下痢や脱水症状、呼吸困難などを起こし、放置すると死亡します。
ジステンパー
イヌ科の動物の間で高い感染力を持ち、種を絶滅させるほどの威力を持った感染症です。
治療薬は存在せず、感染した場合は犬の免疫力に賭けるしかありません。
免疫力が高ければ回復しますが、そうでない場合は3ヶ月以内に半数が死亡します。
アデノウィルス
1型はイヌ伝染性肝炎と呼ばれ、仔犬の場合は突然死することがあります。
成犬の場合は症状が出ないことも多いですが、重症の場合は1週間ほどもがき苦しむ状態が続きます。
命を落とすことはなくはありませんが、多くは回復します。
2型は、ケンネルコフと呼ばれ、人間でいうと酷い風邪のような症状が出ます。
治療薬はありませんが、多くは2週間程度で回復します。
パラインフルエンザ
アデノウイルス2型と同様の症状を起こします。
コロナウイルス
非常に強い感染力を持つウイルスで、食欲不振、下痢、嘔吐などを繰り返し、稀にパルボウイルスとの合併症など重症化すると死亡することもあります。
軽い場合は数日で回復します。
レプトスピラ
犬だけでなく、人間にも感染する恐れのある人獣共通感染症です。
出血型と黄疸型があり、人間が黄疸型を発症した場合は「ワイル病」と診断されます。
いずれも、黄疸症状や粘膜などの充血や出血、吐血、高熱などの症状が出ます。
ネズミが主な感染源となり、野山に分け入ることの多い犬や猟犬などはリスクが高くなります。
ワクチン接種のデメリット
狂犬病予防接種は法律であり、絶対に接種しなければなりません。
しかし、その他の混合ワクチンについては、あくまで任意となっています。
ただ、多くはありませんが、ワクチン接種が原因で体調を崩したり、酷い場合は死亡するケースが報告されています。
そのような事態を避けるためには、午前中早めに、接種日数日前からの体調管理、接種後30分から1時間程度は、院内もしくは車の中などで待機し、犬に変化がないか見る必要があります。
間違っても、犬の体調がよくないのに「この日しか空いてないから」と、人間の都合で無理矢理接種させるようなことは避けましょう。
絶対に受けなければいけないの?
任意接種のワクチンは、基本的に、仔犬の一定期間を除いて、成犬になれば1年に1度の接種になっています。
しかし、アメリカなど諸外国におけるワクチン接種が3年に1度でも効果的であること、狂犬病予防接種についても、ガイドラインで狂犬病が発生していない国(日本を含む)では接種自体行っていない国もあることから、日本でも予防接種に疑問を抱く方が増えています。
確かに、狂犬病なんて日本にはないのに、どうして予防しなければならないのかわからない、混合ワクチンも、副作用の恐ろしさを考えたら、うちのワンコにはさせたくないわ、と思うのもわからなくはありません。
中には、動物病院と製薬会社の陰謀論まで唱える人もいるほどです。
ただ、それでは「自己だけ納得できればいい」「自分さえ良ければいい」という、自分よがりな考えとも言えます。
諸外国と日本のやり方が違うのは「違う国」だからです。これは当たり前です。
国ごとに、狂犬病対策の考え方に違いがあります。
例えばオーストラリアなど、狂犬病予防接種を禁止している国がありますが、動物愛護の観点から、接種を取りやめている訳ではありません。
抗体を持っている犬が居ない方が、いざ発病した時にすぐに発見でき、殺処分することで蔓延を食い止められる、という理由からです。
オーストラリアで蔓延を食い止めるために取られる措置は殺処分が一般的です。
(これは日本における鳥インフルエンザへの対処法と同じことですよね。)
逆に日本は犬の殺処分に抵抗のある国で、事前に防げるものは予防しておこう!という方針です。
予防に重きを置くか、発症後の対処に重きを置くか?の違いとも言えます。
混合ワクチンの中には、発症した場合、治療法がないものもあります。
万が一感染してしまったら、誰のせいなのでしょうか?
苦しむのは誰でしょうか?
ワクチン接種の副作用は確かに気になることですが、少なくとも周りの人や他の犬を巻き込むことはありません。
さらに、レプトスピラなど一部のワクチンは3年効果が続かないため、安易な先延ばしは危険です。
狂犬病予防接種に至っては法律であり、犬を飼う者の義務です。
やり方が、効果が・・・など、私たちが勝手に決めつけて良いものではないのです。
日本に暮らし、犬を飼うのならば果たすべき責任です。
狂犬病など人獣共通の感染症予防接種は、犬のためだけにするのではありません。
人のため、国のためであることを認識しなくてはいけません。
まとめ
予防接種について、よくわからないことや不安なことは誰しもあることですよね。
そのためにも、かかりつけの獣医さんを持ち、日頃からなんでも相談出来る関係を作ることも大切です。
予防接種は飼い犬のためだけでなく、周りで暮らす人や犬のためにも大切なことですから、勝手な思い込みや判断でやめたりせず、決められたものはきちんと接種しましょう。
混合ワクチンも、1年で効果が切れてしまうものは依然としてありますから、こちらについても勝手な判断はしないようにしましょう。
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